「水樹奈々はなぜ売れたのか」「宮野真守は水樹奈々を超えたのか」と水樹奈々の人気を様々な側面から考察してきた。最後に水樹奈々を超える女性声優が現れるかどうかについて考察してみようと思う。
参考:
水樹奈々はなぜ声優界の圧倒的トップに立てたのか? – こえのおと
宮野真守は水樹奈々を超えたか? – こえのおと
水樹奈々の業績をおさらい
- 声優として初のオリコンアルバムチャート週間1位を獲得(アルバム『ULTIMATE DIAMOND』)
- 声優個人として初にして唯一の紅白初出場(第60回紅白歌合戦から6年連続)
- 声優として初のオリコンシングルチャート週間1位を獲得(シングル「PHANTOM MINDS」)
- 声優としては初の東京ドームでコンサートを開催(2011年)
- シングルCD累計売上10万枚突破(『BRIGHT STREAM』102,924枚)
- アルバムCD売上13万枚突破(『ROCKBOUND NEIGHBORS』 139,004枚)
- 第55回日本レコード大賞企画賞をT.M.Revolutionとともに受賞
錚々たる業績であるが、アーティスト活動に偏っていることがわかる。まあ俳優などの芸能活動は数字には出にくいという問題点があるが、水樹奈々のキャリアは主にアーティスト活動によって築かれたといっていい。本当に超えたと言えるのはやはりこれらの業績を塗り替える必要があるだろう。
平野綾
まず水樹奈々を超えるポテンシャルを持っていた声優といえば平野綾が思い浮かぶ。彼女はスキャンダル以降、声優活動はそこそこに女優活動やタレント活動にシフトしていったが、あのまま声優活動をメインに続けていたら声優業界を牽引するような存在になっていたとも考えられる。
そもそもスキャンダルを暴露される声優というのが、当時の声優の範疇からはかなり逸脱していた存在であり、声優ファンだけにとどまらない知名度があった証左でもある。
タイアップが超弩級だったとはいえ2ndシングルの『冒険でしょでしょ?』では65,035枚を売り上げている。ノンタイアップでも『LOVE★GUN』で20,689枚を販売。しかしながらスキャンダル暴露時はCD売上が伸び悩んでいたのは事実であり、人気も落ち着いてきたような印象があった。
それは彼女が声優としてテレビに出ていたわけでなくタレントとしてテレビに出ていたからだろう。『ピカルの定理』のレギュラーなどは完全にアイドルタレント枠での起用で、声優ファンからは自分の手元から離れていくような感覚があったと思う。水樹奈々はあくまで声優としてテレビ出演しているので声優ファンの人気は失っていない。
現在の平野綾は舞台女優としての活動が多く、声優としての印象はない。確かに他声優に比べて一線を画した活動をしているが、これを以って水樹奈々を超えたとはいえないし、これから超えることもないだろう。つーかこれからっしょではない。
南條愛乃
次は南條愛乃である。元々fripSideの第2期メンバーとしての印象が強かった彼女だが、『探偵オペラ ミルキィホームズ』の明智小衣役から声優としての存在感も増し、『ラブライブ』の絢瀬絵里役で決定的となる。
彼女の場合は声優としての活躍ももちろん、fripSideとしてのアーティスト活動も顕著だ。彼女がメンバーになっての1stシングル『only my railgun』はいきなり92,741枚を売り上げている。しかしながら、それがピークでタイアップの弱いシングルの売り上げは10,000枚にすら届かないこともある。売上も右肩下がりであるから、これから10万を超えるのはかなり厳しいだろう。
一方、彼女はソロでのアーティスト活動もしており、こちらは『ゼロイチキセキ』で19,251枚を売り上げている。fripSideの人気が下火になるにつれて、彼女自身の人気にシフトしていったことがわかる。しかしながら、やはりシングル10万枚は遠い。
彼女は紅白歌合戦も出場するチャンスがあったが、それはμ’sというグループのみの出演に限られ更に彼女はダンスが難しいとの理由で出場は辞退している。
内田彩
少し毛色の違う声優を入れてみようと思う。内田彩は『SUMILE SMILE』で14,497枚の売上で特筆すべきものではないが、注目すべきはバラエティMCでの出演である。フジテレビ系列『そんなバカなマン』やAbemaTV『バラエティ開拓バラエティ 日村がゆく』、NHK系列『バナナ♪ゼロミュージックアニソンSP』となぜかバナナマンにめちゃくちゃ気に入られている。バナナマンは乃木坂46の公式お兄ちゃんとしても有名だが、内田彩の公式義理のお兄ちゃんにでもなってほしいくらいである。
アーティスト活動はないがバラエティに出突っ張りの声優としてはほかに金田朋子がいる。彼女はバラエティに関しては他の声優をぶっちぎっているが、声優として水樹奈々を超えたかと言われると違うだろう。
水瀬いのり
いよいよ本命のご登場である。水瀬いのりは新進気鋭の若手女性声優であるが、その人気は同年代の女性声優を寄せ付けないどころか、現在の声優業界のTOP5に入っていると言ってもいいだろう。『Starry Wish』では22,575枚を売上ており、その売上はまだまだ成長途上である。またライブもまだ東京国際フォーラムで1回しか行っていない。このまま行けば東京ドームやさいたまスーパーアリーナも夢ではないと思う。
また彼女は朝の連続テレビ小説『あまちゃん』にも出演しており、女優としてのキャリアもある。ただ彼女は女優は自分が好きになれなかったようで、もう仕事は受けないと宣言しているようだが、売れたら声優を捨てて女優に邁進する人もいる中で、それもまたかっこいい。実は紅白出場経験もある。
現在デビューしている声優の中では一番水樹奈々に迫るポテンシャルがあるのは確実だが、CDの売上10万枚はそれでも遠い道のりである。一個ハルヒのような社会現象に近いアニメの主題歌を担当してほしい。その場合一気に10万の売上を超える可能性がある。もしくは一般層にも訴求できる映画の主題歌でもいい。
なぜこんなにも水樹奈々を超える女性声優が出てこないのか
先の記事では、水樹奈々の時代性に着目したが、それと関連して現在は女性声優がめちゃくちゃ増えていることが挙げられる。女性声優の数が多いことでファンが分散している。昔はこの人さえ推しておけば間違いないという声優がいたが、最近はそれもいない。
声優ファンの嗜好に合致する声優に出会いやすくなったという利点はあるが、大きなムーブメントを起こせなくなったという意味では少し残念だ。