2018年から放送開始が予定されているテレビアニメ『RELEASE THE SPYCE』(以下リリスパ)。キャラクター原案が『ゆるゆり』のなもりだということは有名というか、それを売りの一つにしたアニメなのだが、原作者が同じという以上にゆるゆりを意識しているのでは?と思うような点がいくつかある。特に声優分野において。この記事では、リリスパとゆるゆりとの類似点を明らかにするとともに、リリスパ声優はゆるゆり声優になれるか?を見てみたいと思う。
リリスパとゆるゆりの相違点
類似点を明らかにすると言ったのにいきなり相違点かよと思われるかもしれないのだけど、まずリリスパとゆるゆりは、続編でもなければ全く違うアニメだということは述べておかないといけない。
ゆるゆりは、七森中のごらく部を舞台にして4人の女子中学生の日常を百合テイストを交えて描いたアニメ、およびその原作の漫画である。作者はなもり。アニメの制作は動画工房、監督は太田雅彦、シリーズ構成はあおしまたかし*1が担当している。
一方、リリスパは、公式ホームページのイントロダクションを引用すると
源モモは空崎市に住む女子高生。平凡な日々を過ごしていた彼女はとある事から私設情報機関「ツキカゲ」にスカウトされる。
ツキカゲはどこの国にも属さず平和を影から守る正義のスパイ組織だった。若い女性にしか効かないが能力を上昇させる特製スパイスをはじめ数々の秘密道具、鍛え上げた心身を武器に彼女達は戦う。
素人だったモモの面倒を見るのは高校の先輩でもある半蔵門雪。ツキカゲは師弟制度があり先輩が後輩を鍛えて技術を継承していくのだ。
今、大都市である空崎には犯罪組織「モウリョウ」がその魔手を伸ばしていた。モモは自分を取り巻く家族や友人、商店街の人達を守るため、仲間たちと力をあわせて悪を討つ。
https://releasethespyce.jp
という美少女スパイ(SPY)の物語になっている。キャラクター原案はなもりだが、制作はLay-duce、監督は佐藤陽、シリーズ構成はタカヒロである。
このようにアニメのジャンルから制作会社まで全く異なっているのが、声優のプロデュースという観点では類似性を感じるところがある。
リリスパとゆるゆりの類似性
メインキャスト陣の声優ユニット化
ゆるゆりは、メインキャストの4人の三上枝織、大坪由佳、津田美波、大久保瑠美が『七森中ごらく部』として活躍した。ごらく部はゆるゆりの主題歌だけでなく『マイリトルポニー〜トモダチは魔法〜』の主題歌も歌うなど、ゆるゆりというアニメを超えた活動で、近年のアニメ主導の声優ユニットとしてはトップクラスの人気がある。結成から7年経った2018年にもライブを行なっているし、この4人の声優としてのキャリアアップにも大きく貢献したと思う。
リリスパも、この声優ユニット展開を強く意識している。アニメ放送の4ヶ月以上前から安齋由香里、藤田茜、のぐちゆりによるユニット『ピリペッパーズ』を結成し、CDもリリース済みだ。
そして、特に『目立て!隠密☆大作戦!』という曲のタイトルが『ゆりゆららららゆるゆり大事件』を意識しているというのは穿ち過ぎだろうか。またリリスパおよびピリペッパーズは円や月をモチーフにしているのに対して、ゆるゆりおよび七森中ごらく部は星をモチーフにしているのも符号として映る。
- アーティスト: 藤田茜,のぐちゆり)ピリペッパーズ(安齋由香里,yukacco,彦田元気
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2018/06/20
- メディア: CD
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キャスティングのバランス
ゆるゆりは、メインキャストの4人が当時比較的新人声優だった(三上枝織がデビュー4年目、大坪由佳が1年目、津田美波が2年目、大久保瑠美が3年目)。しかし、メインキャストを支えるサブキャストには、すでにかなり人気があった声優を起用している(藤田咲、加藤英美里、三森すずこ、豊崎愛生、後藤沙緒里)。
このメインに新人声優を積極的に起用して、サブに人気声優を置くというキャスティングは当時の動画工房制作アニメによく見られて、例えばまんがーる!ではメインキャストが宮本佳那子、尾高もえみ、駒形友梨、大橋彩香に対してサブキャストが茅野愛衣、竹達彩奈、喜多村英梨、内田真礼になっている。
リリスパも、メインキャストがデビュー2年目の安齋由香里、6年目の藤田茜、5年目ののぐちゆりと比較的若手が多い*2が、サブキャストに10年目の沼倉愛美、8年目の洲崎綾、10年目の内田彩と実績十分の声優を起用している。
このキャスティングの理由は主に、次に述べる声優をこき使うために時間の空いている声優を必要としているからであると考えられる。
プロモーションの手法
先日ピリペッパーズが3人で合計1,600枚のCDジャケットに直筆サインをしてCDの特典とするというプロモーションを実施した。
これで七森中ごらく部を思い浮かべない人はいないだろう。ごらく部もニコ生で6時間かけて4人でCDのジャケット4,000枚に手書きサインをして特典とした。なおこれを4回もやっている。当時これを見たときはブラック企業の実演かと思ったが、まさかリリスパで再び同じようなことをやるとは思わなかった。ちなみに作者のなもりも3日間カンヅメで、ゆるゆり4巻の特別版に10,800枚直筆サインをしている。
ピリペッパーズは七森中ごらく部になれるか?
ようやく本題に入る。さてピリペッパーズはごらく部のように何年も続く声優ユニットとなるのか?ということだが、結局はアニメの『RELEASE THE SPYCE』がヒットするかどうかということに掛かっている。ごらく部も『ゆるゆり』がヒットしたから売れたのであって、アニメが話題にならなければ、その声優ユニットは売れない。ピリペッパーズは七森中ごらく部になれるか?という問題は、RELEASE THE SPYCEはゆるゆりになれるか?という問題に換言できる。とはいえ放送されていないアニメを論じることも不可能なので、とりあえずPVを見てみよう。
うん、オーラはありそう。