声優を目指すことになったキッカケは?という質問はよく見ると思う。そこで声優さんたちは何と答えている印象が強いだろうか。きっとみんなこれを思い浮かべるはずだ。
「声にコンプレックスがあったけど、それを活かせる仕事があると知ったから」
これこそ声優のテンプレートである。しかし実際これを言っている人で本当に変な声だなあ…と思った人は殆どいない。例えば、竹達彩奈さんも声がコンプレックスだということらしいが、全くそんなことは思ったことがない。普通に素敵な声だと思う。まあコンプレックスというものは周りがどう思っていようと自分が気になった時点で形成されるので、外野がとやかく言うことではないのだが。
しかし声優界には本当に変な声の持ち主がいる。ここでいう『変な』はただ声が甲高いとかアニメ声とかそういうことを言っているのではない。言葉では形容しがたい変な声なのだ。これも例を出すが、金田朋子さんは甲高いアニメ声で確かに普通の声ではないのだが、私の定義する変な声には当てはまらない。音の高低ではなく、何か特殊なものが変な声声優にはあるのだ。
なんか貶してるように見えるが、全然貶していない。むしろ私は変な声声優が大好きである。今回は、私の好きな変な声声優を紹介したい。選ぶにあたり比較的中堅からベテランに位置する女性声優は除いた。
井澤 詩織
変な声声優と言ったら真っ先に名前が上がるのが井澤詩織さんだろう。『ガールズ&パンツァー』のそど子役、『メイドインアビス』ナナチ役など多数演じられているが、一番本領が発揮されているのはやはり、『ウィッチクラフトワークス』の倉石たんぽぽ役だ。
台詞を言っている裏側に変な周波数の音が紛れ込んでいるかのような声の積層構造。一人で旋律を奏でているようで何とも心地よい。よくケロケロボイスと形容されるが、それだけではこの深みを表現できていない。
井澤詩織さんのさらに凄いところは、変な声を出さない演技もできるということだ。例えば『学戦都市アスタリスク』の沙々宮紗夜役は一層の声で違和感は特に感じない。今期放送中の『citrus』にも水沢まつり役で出演中。こちらも少し控えめだが、彼女の魅力さが十分発揮されている。
小見川 千明
変な声声優として名前があがることは少ないかもしれない。最近の小見川千明さんは周囲に溶け込むような普通の声の演技をされていることが多いように思う。しかし過去には、かなり印象的な声の役が多かった。
『花咲くいろは』の鶴来民子、『それでも町は廻っている』の嵐山歩鳥、『エウレカセブンAO』のエレナ・ピープルズ、『荒川アンダーザブリッジ』のP子などでその声を堪能できる。
井澤詩織さんほどの積層感はない。しかしながら小見川千明さんの魅力は声の平板さにある。棒演技と言っているわけではない。台詞が単調的で非常にスムーズなのだ。前の音が終わったところにすぐ次の音が入ってくる感じ。ピアノでペダルを踏んでいるような声といえばいいか。クセになる滑らかさだ。
久野 美咲
ぎょぽーん。甲高い声やアニメ声は除外と言ったが、久野美咲さんはその声の範疇にとどまっていない。ロリボイスを通り越してロリである何か別のものになっている。久野美咲さんの声を初めて認識したのは『ガリレイドンナ』のグランデロッソだが、この声にはエフェクトが掛けられているとはいえ、一瞬で虜になってしまった。
一番、彼女の真価が味わえるのは『世界征服〜謀略のズヴィズダー〜』の星宮ケイト役だ。ただのロリではなく、こういう大人びたロリキャラにバシッと合致するのが久野美咲さんの一番の魅力だと思う。ゲームなら『バトルガールハイスクール』の藤宮桜も老成したロリキャラ役である。
また変なロリボイスという点では吉田有里さんもあげられる。『未確認で進行形』の三峰真白役が分かりやすい。ロリボイスをさらに拳で握りつぶしたような声が特徴。
大森 日雅
ゆりかふぁいおー!大森日雅さんも一応ロリボイスに入るが、彼女の魅力は震えたような舌足らずの声だ。ロリでも不遇な役割の役にすごく向いている。例えばデビュー作の『六畳間の侵略者!?』の虹野ゆりか役に代表される。2018年夏放送予定の『邪神ちゃんドロップキック』の花園ゆりねも似たような役割になりそうで期待している。また『プリパラ』の月川ちりのような弱気なキャラクターも向いている。
私のオススメはゲーム『ららマジ』の卯月真中華ちゃんで大人びた女の子の役なのに、舌足らずな感じが何とも愛おしい。
ちなみに『六畳間の侵略者!?』で共演した長縄まりあさんもなかなか変な声だ。
小林 美晴
変な声声優のリーサルウェポン。それが小林美晴さんである。震え声と表現される声は、主セリフに微細な振動が常に発生しており、聴くものの心をも震えさせるほど強烈な印象を与える。
出演作は2作しかない。『帰宅部活動記録』の道明寺桜役と『にゃ〜めん』かっぷ役だ。圧倒的声質のため、2作しか出ていないのに熱狂的なファンが多い。小林美晴さんのファンはミハリストと呼ばれる。このため『帰宅部活動記録』は伝説のアニメとなっている。
しかしながら先日、小林美晴さんが劇団MIXの舞台『食う寝る処、夢追う処』に出演するのが明らかになった。
2:20から小林美晴さんの声が聴ける。帰宅部活動記録の頃と変わっていない。声優としての活動再開がとにかく待ち遠しい。