『ウマ娘 プリティーダービー』が大ヒットを飛ばしている。アニメの円盤もゲーム効果もあって、深夜アニメでは16万枚を売り上げ、歴代最高を記録した。
先日はNHKの音楽番組「シブヤノオト」で「うまぴょい伝説」を披露するなど、テレビ進出も果たし、活動に広がりも出てきている。紅白出場は個人的には難しいと思っているが、もしかしたらあるかもしれない。
このブログは声優ブログなので、ウマ娘出演声優に着目して、その傾向や法則性なんかを考察していきたい。
ウマ娘声優の事務所傾向
実在の馬を元ネタにしたウマ娘は、2021年7月22日現在、71人存在する。その中にはハッピーミークや秋川やよいなどは含めていない(駿川たづなに関しては実在の馬が元ネタではという噂があるが、ここでは除外している)。そのウマ娘に起用されたと思われる時点で所属していた事務所を調べてカウントした。
青二プロダクション | 11 |
ヴィムス | 6 |
俳協 | 6 |
プロ・フィット | 6 |
アーツビジョン | 5 |
アイムエンタープライズ | 5 |
81プロデュース | 3 |
ホリプロ | 3 |
AIR AGENCY | 2 |
IAMエージェンシー | 2 |
アトミックモンキー | 2 |
ケンユウオフィス | 2 |
スペースクラフト | 2 |
ソニー・ミュージックアーティスツ | 2 |
響 | 2 |
マウスプロモーション | 2 |
すると、青二プロダクション所属声優が11人と最も多いことが分かった。以下、ヴィムス、俳協、プロ・フィットが6人、アーツビジョン、アイムエンタープライズが5人と続く。いずれも大手事務所なので明らかな偏りがあるとも言えず、かなりバランスの良い事務所構成になっていると思う。響やSMAなどの自社コンテンツを持っている事務所の声優も起用しているのも、高い中立性をうかがわせる。
上記表に記載されていないのは、EARLY WING、e-stone music、FIRST WIND production、アミューズ、クレアボイス、クレイジーボックス、スターダスト、ステイラック、スワロウ、ダンデライオンで、いずれも1人である。
アイマス(デレマス)、ラブライブとの兼任率
ウマ娘はアイドルマスターシンデレラガールズ(デレマス)との声優との兼任が多いとよく言われる。ただ見た限り、デレマスだけでなく、アイドルマスターミリオンライブ(ミリマス)やラブライブとの重複も多く見られると思う。そこで、ウマ娘声優それぞれに対して、アイマス、ラブライブの出演がある声優を抽出してみる。
ウマ娘 | 声優 | デレマス |
アグネスタキオン | 上坂すみれ | アナスタシア |
アグネスデジタル | 鈴木みのり | 藤原肇 |
イクノディクタス | 田澤茉純 | 浜口あやめ |
ウオッカ | 大橋彩香 | 島村卯月 |
エアグルーヴ | 青木瑠璃子 | 多田李衣菜 |
エアシャカール | 津田美波 | 小日向美穂 |
カワカミプリンセス | 高橋花林 | 森久保乃々 |
サトノダイヤモンド | 立花日菜 | 久川凪 |
シーキングザパール | 福原綾香 | 渋谷凛 |
シンコウウインディ | 高田憂希 | 依田芳乃 |
スペシャルウィーク | 和氣あず未 | 片桐早苗 |
ゼンノロブロイ | 照井春佳 | 櫻井桃華 |
タイキシャトル | 大坪由佳 | 三村かな子 |
タマモクロス | 大空直美 | 緒方智絵里 |
ツインターボ | 花井美春 | 村上巴 |
トーセンジョーダン | 鈴木絵理 | 堀裕子 |
ナカヤマフェスタ | 下地紫野 | 中野有香 |
バンブーメモリー | 藍原ことみ | 一ノ瀬志希 |
ヒシアケボノ | 松嵜麗 | 諸星きらり |
フジキセキ | 松井恵理子 | 神谷奈緒 |
マーベラスサンデー | 三宅麻理恵 | 安部菜々 |
マチカネフクキタル | 新田ひより | 道明寺歌鈴 |
メジロアルダン | 会沢紗弥 | 関裕美 |
メジロパーマー | のぐちゆり | 及川雫 |
ユキノビジン | 山本希望 | 城ヶ崎莉嘉 |
ウマ娘 | 声優 | ミリマス |
ウイニングチケット | 渡部優衣 | 横山奈緒 |
エルコンドルパサー | 高橋ミナミ | 馬場このみ |
シンボリルドルフ | 田所あずさ | 最上静香 |
トウカイテイオー | Machico | 伊吹翼 |
ナリタタイシン | 渡部恵子 | 周防桃子 |
ビワハヤヒデ | 近藤唯 | 篠宮可憐 |
ウマ娘 | 声優 | シャニマス |
ダイタクヘリオス | 山根綺 | 緋田美琴 |
ウマ娘 | 声優 | スタマス |
ビコーペガサス | 田中あいみ | 奥空心白 |
ウマ娘 | 声優 | ラブライブ |
キタサンブラック | 矢野妃菜喜 | 高咲侑 |
セイウンスカイ | 鬼頭明里 | 近江彼方 |
テイエムオペラオー | 徳井青空 | 矢澤にこ |
ナイスネイチャ | 前田佳織里 | 桜坂しずく |
ウマ娘に出演しており、デレマスにも出演している声優は25人となった。これはウマ娘声優全体の35%になる。ミリマスは6人、シャニマス(シャイニーカラーズ)は1人、スタマス(スターリットシーズン)も1人、ウマ娘にも出演している声優がいる。デレマスはそもそもアイドルの数が多いので兼任率が高くなることは当然なのだが、ミリマスの6人も結構多い。ミリマスは765メンバーを除いて41人の声優がいるので、15%がウマ娘にも出演していることになる(デレマスは27%)。
また、ウマ娘のBNW(ビワハヤヒデ、ナリタタイシン、ウイニングチケット)は結束の強い3人だが、それがすべてミリマスの声優が担当しているというのも興味深い(近藤唯、渡部恵子、渡部優衣)。意図的なものを感じてしまう。デレマスの兼任率の高さは、デレマスの開発がCygamesだというのも関係している可能性はある。また、ウマ娘の初期のプロデューサーは、かつてアイドルマスターのディレクターだった石原章弘だったというもの関係あるかもしれない。基本的に、声質や人柄などを知っている声優のほうが起用しやすい。
では、これは不自然なほど高いのかを考える。『ウマ娘 プリティーダービー』と同時期にサービス開始し、早々にサービス終了してしまった『サクラ革命』というゲームがあるが、実は『サクラ革命』のデレマスとの兼任率は27%(13/47)である。ウマ娘の35%と比較すると小さいが、ウマ娘が突出して多いかと言われると少し疑問ではある。期待の新人声優や人気の若手声優を多く起用すると、デレマスとの兼任率がどうしても高くなってしまうのはあるかもしれない。
一方で、ラブライブ声優は4人がウマ娘声優を兼任している。徳井青空を除く3人は虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のメンバーで、「虹ヶ咲」はやはり人気声優を多く起用しており、新人声優が多い他のラブライブグループとは少し毛色が異なる。虹ヶ咲のウマ娘兼任率は30%となり、デレマスよりも高い。
アイマスとラブライブを含めた兼任率は52%(37/71)で、ウマ娘の全声優の半分以上がアイマスまたはラブライブに携わっていることが分かる。ちなみにサクラ革命のアイマスまたはラブライブとの兼任率は38%なので、これは有意に高いと言ってもよさそうだ。
温泉むすめとの重複率
デレマスとの被りはすでに言及されているので、割と有名だが、他にも重複率の高そうなコンテンツを探していたら1つ見つけた。それは「温泉むすめ」で、私が勝手に「新人女性声優の登竜門的コンテンツ」と呼んでいる。温泉むすめに起用された声優はその後売れる確率が高い。ウマ娘と温泉むすめを兼任している声優を列挙する。
ウマ娘 | 声優 | 温泉むすめ |
タマモクロス | 大空直美 | あしずり星 |
タイキシャトル | 大坪由佳 | いわきあろは |
トーセンジョーダン | 鈴木絵理 | 伊東椿月 |
マチカネタンホイザ | 遠野ひかる | 温泉津佐間 |
キングヘイロー | 佐伯伊織 | 下呂美月 |
メジロマックイーン | 大西沙織 | 河口湖多佳美 |
ナイスネイチャ | 前田佳織里 | 強羅かんな |
イクノディクタス | 田澤茉純 | 玉造彗 |
ダイタクヘリオス | 山根綺 | 三朝歌蓮 |
バンブーメモリー | 藍原ことみ | 山中そらら |
メジロパーマー | のぐちゆり | 酸ヶ湯紗雪 |
カワカミプリンセス | 高橋花林 | 秋保那菜子 |
サイレンススズカ | 高野麻里佳 | 松江しんじ湖しじみ |
マンハッタンカフェ | 小倉唯 | 水上凛心 |
メイショウドトウ | 和多田美咲 | 奏・バーデン・由布院 |
シンコウウインディ | 高田憂希 | 草津結衣奈 |
メジロアルダン | 会沢紗弥 | 鳥羽亜矢海 |
サクラチヨノオー | 野口瑠璃子 | 湯の川聖羅 |
スマートファルコン | 大和田仁美 | 湯河原伊露羽 |
フジキセキ | 松井恵理子 | 南知多まゆの |
テイエムオペラオー | 徳井青空 | 南房総日由美 |
マチカネフクキタル | 新田ひより | 白骨朋依 |
エアシャカール | 津田美波 | 磐梯熱海萩 |
キタサンブラック | 矢野妃菜喜 | 平戸基恵 |
ゴールドシップ | 上田瞳 | 嵐山紫雨 |
ウマ娘に出演しており、かつ温泉むすめに出演している声優はデレマスと同じく25人(ウマ娘全体の35%)となった。温泉むすめ自体がそこまでメジャーなコンテンツではないので、あまり目立たないが、これもかなり高い。ウマ娘のアプリが延期に延期を重ねて、コンテンツ自体が下火になっていたときを、ずっと「ぱかチューブ」で支え続けた上田瞳(ゴールドシップ)が温泉むすめにいるのも高評価だ。
温泉むすめとアイマス・ラブライブ、そしてウマ娘の3つに出ている声優は、田澤茉純、津田美波、高橋花林、矢野妃菜喜、高田憂希、大坪由佳、山根綺、大空直美、徳井青空、鈴木絵理、前田佳織里、藍原ことみ、松井恵理子、新田ひより、会沢紗弥、のぐちゆりの16人である。期待の新人声優や実績のある若手声優が多く見られる。3つの兼任する声優が多いのは、ライブやイベントがメインのコンテンツに起用されやすい声優がいるということを示唆していると考えられる。
兼任率から考える事務所戦略
アイマス、ラブライブ、そして温泉むすめのいずれにも出演していないが、ウマ娘に出演している声優は25人いる。その25人のうち、アイムエンタープライズ所属が4人(嶺内ともみ、篠原侑、杉浦しおり、巽悠衣子)、プロ・フィット所属が4人(高柳知葉、首藤志奈、長谷川育美、石見舞菜香)である。「事務所傾向」を参照すると、アイム所属は全部で5人、プロ・フィット所属が全部で6人だから、アイムとプロ・フィット所属の声優の大半がウマ娘のみの出演となる。
アイムやプロ・フィット所属の声優はアイマスの出演がないというわけではない。実際にアイマスにはアイム所属の女性声優が12人、プロ・フィット所属の女性声優が2人いる。なので、事務所によってはライブやイベントを主とするコンテンツに出る声優を集中させず、分散させているとも考えられる。
ちなみに、嶺内ともみ、篠原侑はラピスリライツ、高柳知葉はRe:ステージ、首藤志奈はアイドリープライドに出演していて、どの声優も1つから2つのアイドル系コンテンツに出演していることになり、誰かに偏ることがなく、バランスがいい。偶然ということは当然考えられるが、ひょっとすると意識的に事務所戦略として声優の仕事を振り分けているのかもしれない。
まとめ
ウマ娘声優は確かにアイマスとの兼任が多いが、デレマスに限って言えば突出して多いとも言えない。しかしながら、アイマス全体とラブライブを含めるとウマ娘の声優の半数が兼任している。事務所別に見てみると、アイムエンタープライズやプロ・フィットなどは効率的にアイドルコンテンツに声優を割り振っている可能性が示唆された。