最近の女性声優の仕事は多岐に渡っている。メインはキャラクターに声を吹き込む女優業の一部だが、お渡し会などの接近イベントや写真集などの活動から分かるようにアイドルとしての側面も強い。アイドルとしての声優が好きな人も多いだろう。
一般的に、女性アイドルには恋愛禁止というルールが存在している。最近はその縛りもかなり緩くなったが、アイドル在籍中の結婚は基本的には許されていない。元NMB48の須藤凜々花は、総選挙のインタビューで結婚を発表し、大炎上した結果、そのままアイドルを引退した。結婚するのであれば、アイドルは辞めるのが当然だと考えられている。
しかし、声優はそれまでアイドル的な活動をしていても結婚を発表した瞬間にあくまで声優として扱われ、咎められることはほぼない。多くのファンはおめでとうと呟き、祝福できない人はファンではないとまで言われる。交際がバレても、声優なんだから恋愛してもいいだろと擁護される。声優自身もアイドル的活動で積み上げたキャリアを殆ど崩すことなく、スキャンダルがあっても結婚後も同様の活動を続けることができる。私はここになんとなく釈然としない気持ちがあった。
こういう大物女性声優の結婚のニュースでいつも思うのは声優のアイドル性と俳優性のアンビバレンツ。正直に言えば、アイドルとしての恩恵を享受してきた人が、同じ職業についたままで結婚のときは俳優になるのは違和感がないわけではない。これはいつか考えてみたいなと思う。
— こえのおと (@koenote_blog) April 12, 2019
アイドルとしてのメリットを享受しておきながら、結婚や交際バレしたら「いや私は声優であって、アイドルではないので」というのは都合がよすぎるし、「アイドルじゃなくて声優なんだから恋愛して当然」というのも詭弁に近いものじゃないだろうか、と思っていた。アイドル的な活動を行なっていたならば、ファンに夢を見させていたわけで、その夢が消え現実を知ったらファンじゃなくなるのも別に普通のことじゃないのかとも思っていた。なぜか?
声優のアイドル活動のリスクがほぼない
一般的なアイドルは10代の後半から20代の前半にかけて、普通の青春を棒に振ってアイドルとして活動する。そこは現実では冴えない男性のためを笑顔にしたり、夢を見させてあげたりという一種の奉仕精神のような尊さがある。その一環として「恋愛禁止」というルールは必然的に課されるものだろう。アイドルを卒業した後にタレントやアーティストとして活躍できるのは極一部で、アイドルとしてのキャリアは殆ど意味を持たない。
一方で、アイドル声優は若くから活動する場合もあるが、多くは20代から30歳近くまで(超えても)アイドル的活動をする。30歳を越えると結婚を許可されるという声優オタクの不文律が存在するので、だいたい30歳前後で結婚し、そのままキャリアを生かして声優活動を継続する。
この2つを比較すると明らかにアイドル声優のリスクは低い。確かに一般アイドルは才能があれば、バラエティー番組やドラマに引っ張りだこになる可能性があるが、リスクに比べてリターンを得られる確率があまりに低い。
声優にはそのようなリスクはほぼない。アイドル活動をすればファンも付きやすい。そして恋愛しても結婚してもほとんど批判されない。アイドルとしてその声優を見ていたファンは減るだろうが、だからと言って仕事が減るわけでもなく、多少CD売上が減ったり、グッズをメルカリに出品される程度である。
この差が私には不平等に感じたのだ。誤解を恐れず言ってしまえば、アイドルは厳しく、アイドル声優はヌルい。
新しいアイドルのカタチ
しかしながら、先日(4月10日)にアイドルグループのNegiccoのNao☆がアイドルを続けながら結婚した。このときはファンからも祝福された。これは彼女の30歳という年齢が大きく関係しているだろうし、アイドルというよりもアーティストの枠に入りつつあるからというのもある。また神聖かまってちゃんのみさこは、現役アイドルのまま結婚することを目標に婚活アプリを使用しているらしい。
アイドルの形が少しずつ変容してきているのかなと思う。アイドル声優はもしかしたら一般的なアイドル業界の先を行っているのかも知れない。